乳酸菌の意思

以前、福井の農家さんに、ティースプーン1杯の土には数十億もの微生物がいると聞きました。これを聞いて、なんだか気持ち悪いと思う向きもあるかもしれませんが、これがポピュラーな見解です。これを気持ち悪いと言うならば、人間の体は10兆もの細胞からできているので、なんだかとっても気持ち悪い。それは置いといて、普段人と人が接するときはあの人のあそこの細胞がどうのこうのという話にはなりません。普通、10兆の細胞の総体としての人のコミュニケーションは、総体レベルでの話になります。10兆という考えも及ばない数をいちいち気にしたりしないのです。
今、チーズの製造に携わっており、チーズのスターターとして乳酸菌を扱います。300キロとか700キロの生乳に入れたスターターの乳酸菌ひとつひとつを観察して、状態を確認するなんてことはもちろんしません。気をつけるのはpHです。バルクを漂うたくさんの乳酸菌が示す意思表示がpHです。もっというと、生乳に含まれている成分なんかも関係してくると思いますから、生乳自体の意思を見ているとも言えます。チーズバットに入れられた数百キロのバルクの変化を見て、今日の乳酸菌がどうとか、乳質がどうとかいうことを感じ取るのです。作業する人レベルが乳酸菌とダイレクトに向き合うには、そういう方法が一番いいと思います。 個々の乳酸菌に意志があるのかどうかわかりませんが、バルクに現れるpHの変化はなんだか乳酸菌の総体の感情表現のように思えます。人にせよ、神経系を通して体中から伝わったたくさんの電気信号が、脳内の神経伝達物質の分泌に置き換わり、それらの総体として感情が表現されるので、なんだか似ていると思いませんか?